振動人生記録 by gifdog97

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アンデス音楽の歴史を調べた

こんにちは.今日は若干風邪気味でほぼ一日中布団で丸まっていました.東京の部屋は寒いですね….

 

さて,昨晩思うことがありアンデス音楽(いわゆるフォルクローレ)の歴史について調べたので,わかる範囲でまとめてみたいと思います.

フォルク民として,正確な歴史の把握はいつかしなくてはならないと思っていたのですが,今回調べたのには理由があります.来年の3月に「アンデス民俗音楽の調べ」という,フォルクローレをやっている大学生たちによる演奏会があるのですが,昨日そこでやる曲が決まりました.Torbellino (Wiphala) と Condores de Fuego (Akapana版) です.いずれもかなり変わった作品です. YouTube のライブ動画を貼っておきます.


WIPHALA - Torbellino


AKAPANA - Condores de fuego

 

2曲とも僕が提出した曲だったので,嬉しいな~と思いつついろいろと調べてみました.

Torbellino は曲中でリズムが目まぐるしく変わるという,他ではほとんど見受けられない形態の曲です.調べたところ,リズム名は "Seria Oriental" とのこと.東部のリズム詰め合わせ,と言った意味でしょうか.確かに曲中のリズム: Carnaval や Taquirari は東部低地地方のリズムです.

Condores de Fuego は, YouTube で調べるといくつか音源はあるのですが,今回は Akapana というグループによるアレンジを練習します.他の音源との違いはなんといっても「タルカ」という笛を使っているか否か.演奏会でよく聞かれるフォルクローレの形態は,管楽器がケーナサンポーニャ,弦楽器はチャランゴとギター,打楽器がボンボ,というスタイルが主です.ここにタルカという楽器が入ることはめったにありません.だからこそこの曲に目新しさ・面白さを感じるのですが,なぜタルカはこれほど使われる機会が少ないのでしょうか?

実は,上に挙げたいわゆる「よく聞かれるフォルクローレの形態」は比較的新しいもので,タルカはその新しい形態に入り込めなかった,というわけなのです.そのあたりの事情について書きたいと思います.

 

まずはアンデス音楽の伝統的なスタイルを解説します.16世紀にスペイン人がアンデスの地にやってくるまで,アンデスには弦楽器がほぼ存在しなかったようです.それまでアンデスの人々がやっていたのは,笛と打楽器のみを使った「アウトクトナ( Autoctona ) 」と呼ばれる形式の音楽でした.アウトクトナで使われるケーナサンポーニャといった笛の原型は紀元前から存在していたと言われており,非常に長い歴史を持った音楽と言えます.そして実は,タルカもまたアウトクトナの主要な楽器の一つでした.伝統的な形式においては,タルカは非常によく使われていた,というわけです.(アウトクトナ時代の楽器について補足すると,ケーナは竹や木だけでなく,動物の骨も材料として使われていたようです.また,ボンボは実はスペイン人が持ち込んだものを元に作られたものであり,アウトクトナで使われるのは「ワンカラ」という太鼓です.)

さて,16世紀にスペイン人がやってきて,弦楽器がもたらされました.チャランゴはそれを元に作られたと言われています.そこが大きな分かれ目でした.ここからは推測ですが,弦楽器を伝統的な音楽に取り入れる際,ケーナやサンポ―ニャはヨーロッパにも似た形式の楽器があったため比較的溶け込みやすかったのではないかと思います(フルートやパンパイプ).対してタルカの音色はあまりに独特なので,弦楽器と共に演奏される機会が少なかったのではないかと思います.

それから時代は代わり,1950年頃,現在のフォルクローレのスタイル「コンフント( Conjunto )」が確立したと言われてます.当時の最も代表的なグループがロス・ハイラス( Los Jairas )で,彼らの構成がケーナサンポーニャチャランゴ・ギターでした.ハイラスはボリビア国内のみならず世界中で活躍するコンフントでした.結果として,今現在の構成が世に広く知れ渡り,タルカを耳にする機会が減った,というわけです.ある意味,スペイン人の支配が原因となっていると言えるでしょう.

 

コンフントはそれはそれで非常に面白い音楽ですが,その原点たるアウトクトナもまた面白い音楽です.現在では,アウトクトナが商業音楽の分野でも盛んに取り入れられているようです.それでもなお, Condores de Fuego のようなコンフント形式の構成にタルカを大々的に取り入れた音楽は珍しいのではないかと思います.スペイン支配の影響が強いコンフントと,伝統的なアウトクトナの融合.ある意味で,民族融和的な取り組みとも言えるのかもしれません.

 

そういえば Torbellino のリズムは Seria Oriental ,東部低地地方はスペイン人も過ごしやすい気候であり,スペイン文化の色濃い近代的な様式が発達した地と言えます.その現代的な構成・リズムは,まさにアウトクトナと対局をなす音楽.適当に挙げた曲でしたが,思ったより面白いプログラムになりそうです.

 

というようなことを昨晩の朝方まで半袖短パンで調べていました.そりゃ風邪ひくわ.テスト近いしここでの体調不良は大打撃です,さっさと寝ます.